ずっと…




「涼弥くん。今日、事務所によるわね?」
「えっ?」
「何かね、社長が話しがあるんだって」
「…そうですか」



涼弥は、父親が苦手だ。
立派な人間だとは思っている。
でも、“自分の考えは全て正しい”という考え方の人で、涼としての話しはもちろん、涼弥の話しすら聞いてはくれなかった。
涼のことは、もう完全に忘れているし、涼弥も仕事道具としか思っていないようだった。
そんな父親に、涼が心を開くはずがなかった。
父親に対しては、藤涼ではもちろんなく、藤涼弥でもない、事務所に所属しているモデル“涼弥”として接していた。
だから、涼弥は父親を“社長”と呼んでいた。