スピリット・オヴ・サマー

『まあ、母さんが無事であったのは良かったが…。』
 日常の機動力である中古の250CCのオフロードバイクに喝を入れ、夜の高速を飛ばしてきた。少々身体に応えたが、学校のことには父も母も触れようとしなかったし、ことがことだけにこっちも必死だったのだから、とふてくされて晩飯をかき込む自分を見て微笑む母の無事が何より嬉しかった。学校を中退したことを密かに気に病んでいた憲治にとって、実家に帰ると言うことはいささか勇気のいることでもあったのだから。