グラウンドの端っこでは陸上部が整理運動をしている。吹奏楽部の楽器の音も、プールが開いていた時間にくらべるとないも同然だった。
 その寂しさが、憲治の胸中にいまだ感じたこともないほどの虚しさを誘う。その刹那、あの「少女」がヒトならぬモノ、であると言う事実(?)が憲治の魂の淵に、今見ている自分の影の頼りなさを補うほどの、濃い「密やかな影」を落とした。
 茜色になるにはまだ早い空を、ガラス越しに見上げる憲治。
 どん。
「…あ、いたァ。」