それに、本当はもう一人会いたい人がいる。いや、会わなければならない人、かも知れない。「少女」は会わせてくれるだろうか。会えないとしても、「少女」に聞いてもらいたかった。あの日の「心残り」を。
 そんなことを考えながら、1階北校舎の廊下を歩く憲治。足下を見る。自らの影が落ちている。なぜか、その影の濃度に物足りなさを感じた。
 ぱたり、ぱたり。
 今日はほとんどのクラブは休みなのだろうか。校舎の中はやけに静かだ。