あきれたのは憲治の方だ。
 あれだけ神秘的に現れ、さんざん自分の深層意識をかき回し、トラウマまで持っていってしまった「学校の精」が、である。生身の人間が怒ってるのかどうかさえ解からないと言うのもおかしな話だ。
「『精霊』、だろオ?人の心ぐらい読めるもんだと思ってたんだけどナ。」
 そう簡単に読まれるのも何だが、「少女」の意外な一面になんだかがっかりするやら、安心するやらの憲治。
「あー、まァねェ…。」
 ちらちらと憲治のほうを見ながら、少し困った微笑みでもじもじする「少女」の横顔に、憲治は妙な胸騒ぎを覚えた。