「なァ、」
 そおっと憲治の顔を、不安そうにのぞき込む「少女」。その表情は夕暮れの終わりとともに、何とはなしに「生身」の色を増しているようにも思える。
「怒ってなんか、いないョ。」
 ため息交じりに応える憲治。俯いたままで、しかしその顔には、何もかも終わった後の、ちょっと疲れたぐらいの微笑みがあった。それを認めると「少女」は、ほっとしながらもあきれた様なため息を漏らし、
「良がったァ。何だべ、ずぅっと黙ってんだもん。気になるべ?」
と言って、すたすたと憲治の前を歩き始めた。