消えていく虚像。全ての現実をなげうってもかまわないと思わせるほど愛しい幻。たとえ現実に戻れないとしても見続けていたかった夢が、今、幕を下ろそうとしている。
「行くなぁっ!行かないでくれぇっ!」
『引き止めないで。』
「好きだっ!何度でも言ってやるから行くなぁっ!」
『あなたが自由になるために。』
「俺が、自由に…。」
 夏風は、長かった夏の陽の光とともに憲治の腕の間をすり抜けて、「逝った」。

第4節に続く