スピリット・オヴ・サマー

 「千佳子」の横顔に、憲治は「母親」と言う言葉を思い出した。強くて、優しくて、哀しい。自分がここに戻って来たのも、母が入院したとだまされてのことであったことも思い出した。
「その腐り始めた『純情』を砕かねぇと、おらぁ、何時までたっても自由になれねえ。無論…、」
 そう言って「千佳子」は憲治に瞳を向けた。逆光の中、憲治は「千佳子」の瞳に儚い「風」を見た。
「それはあんだ自身のことでもあるわけだァ。」