スピリット・オヴ・サマー

 手近な机に腰掛ける「千佳子」。憂いとも慈愛とも思える影が、美しい横顔を縁取る。南向きの窓から、夏の日差しが今日最後の輝きを放つ。
「おらぁいっつも押さえつけられでだ。あんだの意地っ張りな『純情』って奴に…。告白するってことぁ、それまで『同級生』ぐらいでいられた二人の関係が、次の瞬間に『友達』以下になるってこともありうるってことだぁ。そう、あんだが望んだのは紛れもねえ、『二人がいる風景』でしかなかったなだ。結末を必要としねぇ、ただのきれいな風景。そしてあんだはそれを守り切ってしまった。『純情』の二文字が腐り始めたのにも気づかずに。」