スピリット・オヴ・サマー

「そりゃあ、千佳子のこと思いつめてて…、」
 俯く憲治。
「本当に好きだった?本当はただのスケベ心で、」
「違うっ、俺ぁ、俺ぁ本気でっ、」
 目の前の机に手を突いて、身を乗り出した憲治。しかし「千佳子」はその勢いに負けなかった。
「あらぁ、そおっ!『純情』だったって、そう言いてぇ訳っ!」
 そして憲治が手を突いた机を、ばんっ!っと叩くと、一気にまくしたてた。優しかった少女の顔から微笑みが消え、「千佳子」は一人の怒れる「女性」の顔になった。