スピリット・オヴ・サマー

「それだけじゃねぇ、もっと大事なことがあった。それが一番おっかねぇことだったんだべ。」
「大事な、こと…。」
 憲治は押し黙った。
「言ってやる。」
 目を開けた「千佳子」は、憲治の両手をそっと解くと、哀れむ様な、軽蔑する様な、寂しげな表情を見せた。
「自分で呼んだくせに…、」
 その台詞に憲治ははっとした。
「夢ん中であっても嘘のつき通し。傍に居たいくせに自分からは近づけない。逃げてばっかりで…、」