スピリット・オヴ・サマー

 条件反射だった。中学の頃、女子生徒の胸に触って、えらく担任に怒られた記憶が蘇る。そして、自分が「この土地」の人間であることも。
 しかし、「千佳子」は怒りもせず、かと言って泣きもせず、ただ微笑みながら憲治の手を、そっと自分の掌に包んだ。
「怒って、ない?」
「さーて、何とだべ?」
 悪戯っぽく笑った少女は、憲治のその手を白い指先で開きながら
「さっき思ってだべ。おらのごど『空気みだい』だぁって、」
とつぶやいた。