憲治の胸中は穏やかではなかった。
 会ってしまったのだ。小学校の頃から、ずっと思い続け、しかしついに振り向いてはくれなかった「その女性」に。だが、背後で自分の後頭部を気遣うこの「存在」に憲治の心はざわめく。何しろ、自分はすでに23歳だと言うのに、同級生だったはずの彼女はどうだろう、どう見ても「あの時のまま」、8年前の中学生のままなのだ。
「なんぼかコブ出来でだども、憲治君はこんたらごってだば、じょさねべェ(こんなことぐらいじゃ、どうって事ないよね)。」