なるほど、そこならば表通りからはよく見えない。憲治は、微かな安堵をにじませる。
「別にぃ。病院に人を迎えに行く、ってのは本当だったんだから。帰り道に寄った、とか言っておくさ。それに今の聖菜の体力じゃ、そんなに遠くに行けないだろ。ちょうど良かったんじゃない?」
 憲治はそう言ってラムネをあおった。からり、とビンの中でガラス玉が鳴る。
「そんなことより、」
 憲治は一息ついてから、目線を遠く北の山肌に向けながら切り出した。