太陽が今日一番の高さになるまで、あと少し。
 東の山並の端から派手な入道雲が覗いているほかは、嘘臭い青空が広がっているだけだった。そして、憲治と聖菜は北中の前の「あの」小さな店にいた。開店間もない店先の、自動販売機が並び、奥まっているスペースで、これと言って言葉を交わすでもなく、夏風と太陽が真上に昇っていく様子に惟いを泳がせているだけだった。
 憲治にしてみればバイトを休ませてもらっている都合上、正直、この場所に来るのは乗り気ではなかった。しかし、ここに来たがっていたのは聖菜だった。憲治は聖菜のたっての願いで、バイクに彼女を乗せてここまで来たのだ。