「だって、お医者さんも言ってたじゃないですか、病院に寝に来たんですかまったく、ってぐらいに。こんなのは見たことがない、不思議だけれど本当に何ともない、全然心配いらないって言ってましたよね。」
 聖菜の体調が好調この上ない理由は、憲治にはよく分かっている。「抜け出ていた魂が戻ってきた」だけなのだ。肉体のほうは、病院の処置で回復している。朝一番の精密検査でも、全く異常は見られず、医者が愚痴った、というのは本当であった。
 とは言え、予想外にあっけらかんとした様子の聖菜に、いくぶん面食らいながら、憲治は言った。