憲治は電話を終えると、あわただしくも軽やかに病院を出た。微かに鼻歌も混じる。
 そして、小一時間もした頃、憲治は小脇に新品のヘルメットを抱えて、ぱたぱたとスリッパを響かせて病室に戻った。ちょうど、聖菜の父と母が病室のドアを開けて出てくるところだった。
 …このたびは駆けつけてくれてどうもありがとうございました朝まで付き合わせてしまいまして申し訳ありませんでしたでも医者も半ばあきらめていたみたいですけど不思議なものですねあなたが声をかけた途端に意識が戻るなんて。
 そんなことを言いながら、何度も頭を下げる聖菜の両親。