午前8時。
 中央病院の廊下に、憲治の声が響く。
「…、あ、すいません、プール監視のバイトの…、あ、憲治です。おはようございます。実は、今日、急用でお休みを頂きたいと、親戚が急に倒れちゃって…、いいですか?ありがとうございます…、」
 憲治はいったん電話を切ると、再び電話を取った。母に、先程の電話の件を話し、口裏を合わせるように頼んだ。その様子から、電話口の向こうで母が憲治に食い下がっているのがよく分かる。憲治は、やっとのことで電話を切った。