憲治はそう言って、憧子の唇を自分のそれで塞いだ。きつく、抱きしめた憧子の身体が、熱く火照ってくる。憧子と過ごした景色が、昨日の夜、焼け落ちる体育館に重ねたイメージよりもはるかに鮮烈に迫ってきた。
 憧子が笑う。憧子が泣く。
 憧子がささやいて、憧子が激する。
 憧子の感触、憧子の鼓動。
 髪の匂い。体温。唇や小さい乳房の柔らかさ。
 月の中で輝く憧子の姿が浮かぶ。
 もう、二度と会うことのない、醒めて見た己の夢のカタチを、憲治はいつ迄も抱きしめていたかった。叶わぬことが分かっていても、尚一層。