消え入りそうな憧子の言葉に、憲治は首を傾げる。すると憧子は両手で顔を覆って、嗚咽交じりに叫んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさぁい!…おらぁ、おらぁ、大変なごど、してしまったァッ!」
「な、何だよ。大変なことって…、」
 憧子が泣き濡れた瞳を憲治に向ける。
「…やっぱし、分がんねがったなだな…、」
「やっぱし、って…、」
 不安げな表情を見せる憲治から目を反らし、憧子は深くうなだれながらつぶやいた。
「…言いにぐいども、憲治さんが昼間会ってだのは、本物の『聖菜』じゃねなだ…。」