「あれぐれぇで、おらは『死んだ』りしねェ。まして、この北中が廃校になるまでは、どごさも行ぎ様がねぇべェ。」
 憧子はそう言うと、「あの店に行こう」と踵を返し、憲治の前を歩き出した。どこと無く寂しげな憧子の背中を気にかけながら憲治は、おう、と言ってバイクを押してその後に続いた。

 憧子の黒髪が、白いブラウスの肩こう骨の辺りを右へ左へと揺れながら撫でている様を見つめながら、憲治は再び、深く息を吸い込んだ。

第2節に続く