「名前で呼んでいいよ。」
と憲治が言うと、間髪入れずに聖菜が反論する。
「いいえ、中学時代の責任をとってもらいますからね。当分の間『先輩』と呼ばせてもらいます。」
 そう言って聖菜は白い歯を見せた。今日一番の、何の陰もない笑顔だった。
「それに、」
「それに?」
「好きなんです、先輩って呼ぶの。なんでかはわかりませんけど。」
 憲治が苦笑いで応えると、聖菜は空を見上げながら言った。