8月の空は夕日の丹(あか)を含んで薄紫に、入道雲は気流に崩れながら桜色に染まる。
 長くて暑い月曜日だった。
 そろそろ暮れかかる時分。30分ほど前に近所の子供達が花火を買いに来るまで抱き合っていた憲治と聖菜。今は抱き合わぬまでも、依然として同じ場所で言葉少なに肩を寄せあっていた。やがて店のシャッターが閉まると、薄暮の中、店の軒先が自販機と街灯の下で明るく浮かび上がった。
「先輩、」
 聖菜が、まだ腫れぼったい目蓋を伏せ気味にしながら言った。