聖菜の、短めに切り揃えた髪に顔を埋めたとき、憲治は聖菜の身体に「日向の匂い」を感じた。憧子に良く似た「風」が見えた。それは聖菜と心触れ会えたから、そう、憲治は思った。
 逝く夏を惜しむ鋭い陽射しの下、水晶のような透き通った沈黙が、二人の間を緩やかに通過する。
それだけだったが、憲治にはそれだけで十分だった。

第6章「孤独の太陽」終