憲治の言葉に、聖菜はまたも子供のように、うんうんと大きくうなづいた。そして、幾分涙も治まった頃、泣きはらした瞳で憲治を見下ろしながら、
「今も『悪い先輩』ですか。」
と、やはり子供のようにしゃくり上げながら聞いた。
 憲治は少しだけ黙ってから
「聖菜はどう思う?」
 それは冗談でもなんでもなかった。
 8年を経て、やっと自分の罪が告発されたばかりだ。「罪」が確立した時点で赦しが始まる、と憧子が言っていた。だとすれば、自分はまだ「悪い先輩」なのかも知れない。
 そんな気分だった。

第4節に続く