憲治は混乱した。自分の感情が、「発生」しているのではない、「抽出」されている。
 やがて、「少女」の唇がゆっくりと開く。ひとひら一葉の官能が、手弱やかに零れ落ちる。
「よくおざったぁ…。」
 憲治は、「少女」が自分の名前を呼びながら顔を近づけてくるのを見ながら、気を失った。ただ、「少女」の唇の柔らかさが、意識の彼方で「恐怖」を拭い去っていくのを感じていた。

第3節に続く