スピリット・オヴ・サマー

 とは言え、今さっき「今は一人」と言われた時に感じた、明るさの陰に潜む不自然さも心に淀んだまま離れない。どこか釈然としないのだ。
 憲治は何も言わずに聖菜の手を握った。聖菜に触れたかった。聖菜の心の「風」に触れてあげたかった。
「あ、あ、」
 聖菜は小さく言って俯いた。憲治は聖菜と向き合って、聖菜のもう片方の手を取り、それを自分の両手で包んだ。
 情けない自分を聖菜の前でさらす覚悟を決める憲治。掌から伝わってくる聖菜の小さな手の温もりが憲治の言葉を待っている。