スピリット・オヴ・サマー

 憲治は眼を大きく開いておどけてから、軽くうなずいて
「構うもんか。昔のことだよ、俺との関係なんて。いい恋、したんじゃない?」
と小さく言った。
 本当の所、憲治は聖菜の言葉に救われた気がしていた。「憧子」の言った、彼女は赦している、という言葉を実感したかったのだ。
 ただ、同時に、聖菜の言葉が憲治をいささか情けない気持ちにさせていたのも事実だった。憲治以外の相手への気持ちを言い出せた聖菜への尊敬と、いまだに8年前の罪を詫びることのできない自分への嫌悪が入り混じっていたのだ。