「元気に、してましたか?」
 聖菜が、まるで数年ぶりに教え子と再会した教師のように憲治にたずねた。
「ん、まあまあ、ね。」
 グラスの水に浮く氷を指でくるくると回しながら、憲治は生返事で応えた。
 適度に冷房の聞いた小綺麗な蕎麦屋の店内には、数人のサラリーマンと思しきワイシャツ姿の男たちがいるほかは、憲治と聖菜だけだった。店内のテレビが高校野球の中継を垂れ流している。地元校の出場はない夏だった。
「就職口、早く見つかるといいですね。」
「うん。まあね。」