憲治は唖然とすると同時に、ふつふつと沸き上がる憤りに熱い、そして暗い衝動が交じわる。
 「少女」の胸元の白い肌が、ブラウスの襟元から覗いた。その瞬間、憲治の中で影が弾けた。そして「少女」の肩をわしづかみにしようと、憲治の手が伸びた刹那、であった。ほんの一瞬の差で、「少女」は意外な行動に出た。
「あっ…、」
 憲治の驚きは、言葉を無用にしてしまった。憲治の手をするりと交差(か)わし、今「少女」は彼の胸の中にいる。ほのかに、プールのカルキが匂う。