スピリット・オヴ・サマー

 聖菜の言葉が、「聖菜」に重なる。あの日、幻の黄昏に抱きしめた、幻の亡骸の重さが憲治の腕の中に蘇る。
 彼女は、「聖菜」は憲治を赦した。「憧子」は言ったはずだ。しかし、あの醒めて見る夢の中での出来事に何一つ確証の持てないままでは、その「赦し」とやらも、正に雲をつかむような思いである。
「夏休み、ですか?」
 聖菜が話しかける、微笑みかける。憲治の心が肉体への距離を縮めていく。
「いや、まぁ。そう言われりゃそうかな。」
「北中のプール監視、してるんですね。」