憧子と過ごした時間の一秒一秒が、乱雑に憲治の心のスクリーンに浮かび上がる。幻燈のごとき制止した記憶の映像を、憲治は胸の奥にとどめようと、己の肩を抱く。
 炎に照らされながら、憲治は憧子の記憶に浸る。目を閉じる。目蓋の裏が熱くなった。
『夏が終わる。憧子は、逝った。』
 そんな言葉が憲治の心に浮かび、すぐに消えた。

第5章「Sprit of Summer」終