案の定、北中の前は消防と野次馬でごった返しており、とてもかき分けていける状態ではなかった。憲治は北中の脇をかすめて裏手に廻る。
 北中の裏には、もとはリンゴ畑だった小高い丘がある。そこに向かう憲治のバイク。オフロードバイクであったことに感謝しつつ、憲治は丘の上にバイクを止めた。見下ろせば、体育館が燃えていた。
 空を焦がしながら踊る炎。舞い上がる火の粉は、まるで醜悪な流れ星。時折、焼け落ちる建材に驚いた様に炎が破裂する。
「やばいぞ、やばいぞ…、」
 憲治はまた、意味もなく繰り返す。そして、ヘルメットを脱いだ瞬間だった。