「なーに言ってんの。おらぁ、お金は持ってねェ。憲治さんのお金だべ?」
「お前の力でな、ちょいちょい、って…。」
「ばがもの。」
 きっ、と憲治をにらむ憧子。
「そーゆーごどするのぁ、時代遅れの低級霊だ。おらみだいな『ハイソサエテェ』なモノは、葉っぱの小判みでぇなごどぁやらね。」
「…ハイソサエティ、ね。」
 憲治はしぶしぶ自分の財布から硬貨を取り出した。
 じゃき、じゃき、じゃき。
 飲み込まれていくコイン。コーラのボタンを押す。自動販売機は軽く唸った後、ごとりと缶コーラを吐き出した。