太陽の角度が、影を微妙に伸ばし始める頃。
 理由のない涙も落ち着いた憲治は、憧子に手を引かれて校舎の前にある小さな店の軒先にやってきた。
 パンやら飲み物やらがメインの小さな店。夏はアイスも扱っている、明らかに中学生目当ての店らしく、日曜日は店を閉めている。
「さ、気ぃ取り直してぇ、一杯ヤるべ?」
 憧子はそう言って店の前の自動販売機を小突いた。
「おごってくれる、とか?」
 憲治は余裕を呼び戻そうと、いつもの調子で軽く言った。まだ、目蓋が熱を持っていたが。