「それ」が憲治の目の前に舞い降りたとき、憲治は声を上げた。
「…こ、れ…、」
 異形の翼。全翼型模型飛行機。
 プロペラ、動力のゴム、バルサ材の細い胴体は市販のものだが、真上から見たときの、巨大なブーメランの様なシルエットはマトモではない。
 間違いない、憲治自身が作り上げ、最も気に入っていた「奇形」であった。
「やっと飛んだでェ!」
 50メートルも向こうだろうか、全翼機の飛んできた方向から歓喜の声がする。憧子の声だ。