日曜の午後。
 北中のグラウンドに、憲治はやってきた。
 北中のグラウンドは、都会の学校とは違って塀で区切られたりはしていない。30センチそこそこの土手が境界線。中が北中。外が田の畦道。それだけだ。
 その土手に腰掛けて、憲治は呆然と野球部の練習を見ていた。
 「憧子」に聞きたかった。千佳子に会った、本当の意味を。それに、会いたかった。例え今日会ったことで、また再び死期が近づくとしても。問題は憧子が自分を惟うが故に会うことをためらっている、ということだった。