ホームの見える駅の窓から、憲治は千佳子の乗った列車を見送った。千佳子は手を振りながら、
「何かあったら、連絡するからね!」
と叫んだ。
 憲治も手を振った。笑いながら。そう、列車が見えなくなり、駅から歩き出すまでは。公園の駐輪場に付く頃には、夕刻で逆光なのをいいことに、憲治の目からはぽろぽろと涙が零れ落ちていた。
 泣こうと思って泣いていたのではない。悲しいとか、悔しいとか言うのではない。ただ、涙が出た。強いて言えば、寂しい。