「お医者さん、みたいだな。」
「俺が、か?」
「カウンセラーなんか、似合いそう。」
「まさか。人助けなんて。自分すら助けられないんだから。」
「今日は、一人助けられた。」
「…。」
千佳子の瞳の中に、憲治は再び「風」を見た。
それは「PAVANE」で見た、重く淀んだ悲しい「風」ではなかった。稲穂の海を渡る、あの夏風。何処へでも行こうとする、解き放たれた色をしていた。
少し、寂しげな色。
憲治は、千佳子の白い手に触れた。
「俺が、か?」
「カウンセラーなんか、似合いそう。」
「まさか。人助けなんて。自分すら助けられないんだから。」
「今日は、一人助けられた。」
「…。」
千佳子の瞳の中に、憲治は再び「風」を見た。
それは「PAVANE」で見た、重く淀んだ悲しい「風」ではなかった。稲穂の海を渡る、あの夏風。何処へでも行こうとする、解き放たれた色をしていた。
少し、寂しげな色。
憲治は、千佳子の白い手に触れた。



