スピリット・オヴ・サマー

「別にどうでも良かったけど、その子の後についてった。何だか、ふらふらついていった感じだったんだ。気がついたらプールに行く途中の廊下だったのよ。私、憲治君に会うの、何だか恐かった。だから、『もういいわ』って言って引き返そうとしたら、その子、『憲治さんに会うの、そんたにおっかねなだが?』って。」
 それは「憧子」だ、と言っても説明しづらいものだから、憲治は黙したままだった。
 言葉もなく、謎に浸る千佳子の横顔を見つめる憲治。やっとのことで、適当な言葉を探し出した。