少し、照れたように俯き加減で微笑む千佳子。耳たぶの辺りに、幽やかに紅が挿した。
 憲治は「ちょっと」の先を問わなかった。分かっていた。以前より鈍感ではなくなっている自分に、憲治は少し大人になった気分がしていた。
「プールサイドで監視してる憲治君が見えたわ。」
「見えた?いつ?」
 動揺。
 まさか「憧子」といるところを見られているのではないか、と思った。それでどうと言うこともないと言えば、それまでではあるが。
「金曜日。昨日よ。憲治君、だらだらしてわね。アレで給料もらってるの?」