借り物の説教に幾分気が引けていた。だが、千佳子は、ほお、と憲治を見つめ、そして憲治の言葉が終わると満面の笑みを湛えながら「ありがとう」といった。

 駅が見え始めた頃、千佳子は意外な話を始めた。
「信じてもらえるかどうか、分かんないけど…。聞いてくれる?」
「…何?」
「私ね、北中の前まで行ったんだ。」
「会いに来てくれれば良かったのに。」
「うん…、でも、何だか、ちょっと…。」