壁に手を着いたまま、床を見つめて憲治は黙り込む。
 どの学校にも、「怪談」は存在する。憲治の脳裏をよぎったのはその二文字に他ならない。ここにだって色々と噂がある。音楽室、美術室、理科室、その他諸々。体育館にもあった。
「2年1組って、何かあったか?」
「なじょしたぁ(どうしたの)?」
 ころころと転がる、そう、例えるならガラスの風鈴。そんな声が憲治を呼んだ。声の方を向く憲治。「少女」はそこにいた。