公園の駐輪場にバイクを置いたまま、憲治と千佳子が駅に付く頃、町には暮色の気配が漂い始めていた。千佳子の実家はこの町から一駅南の隣町である。
 「恋人ごっこ」の果ての帰り道、千佳子が今の憲治には少々堪えることを、わざと困らせようとする無邪気さで口走った。
「憲治君は、『悪い先輩』だったの?」
 憲治は少し眉間にしわを寄せながら、んー、とうなった。そして、少しの間を置いて遠慮がちに、逆に問い返した。
「聖菜は、何か言ってたか?」
「恨んでたよぉ。」
 そう言ってけらけらと千佳子は笑う。