中央廊下の北端、北校舎と中央廊下の接するT字路が迫る。左に曲がれば、そしてその終点にはあの懐かしい教室がある。憲治は北校舎の壁に、だんっ、と手をついて急停止した。そして左手の廊下へと視界を滑らせた。
「2年1組、の教室。」
 その彼の視界の中に、一瞬、「少女」が紛れ込む。が、その姿はすぐに教室の中に消えた。「中に入った」と言う感じではなかった。正に、教室の空気の中に紛れる感じだ。その光景は憲治の心中に、「嫌な考え」を生んだ。
「幽霊は勘弁してくれよ…。」