公園が見渡せる小高い丘の東屋のベンチ。隣り合わせに腰掛けた二人。真上から照らす強い日差しを嫌ってか、午後3時を少し回ったぐらいの公園は人気も少なく、増して、丘とは言え、長い石段の果ての東屋。誰もいなかった。
 はるかな山並を見渡しながら、あきれたように千佳子が言う。
「彼も変わり者。さっさとどこかに就職しちゃえばいいのに、絵筆1本で食べていくんだって…、あきらめが悪いんだから。」
 それから憲治を見て、
「あきらめの悪さは、昔の誰かさんみたい」。