「…そうか、それで俺を…。」
 「PAVANE」から駅前通りを東へ500メートルほど行くと、町の外れ、山のふもとの公園がある。もとは空き地に毛の生えた程度だったが、今は水飲み場や真新しい東屋などもできて、公園らしくなった。
 午後の陽光の下、そこに至るまでの道程に、憲治は千佳子の胸の内を聞かされた。
 千佳子は来年、結婚するかもしれないという。相手はバイト先のファーストフード店で知り合った男で、建築現場で稼ぎながら画家を目指しているのだという。
「そりゃ大変だ。」
 憲治は公園の入り口に、押してきたバイクを止めた。