そして、その「風」の中に、自分のずるさに怯え切った千佳子の影があり、その影は憲治自身の中にもしっかりと巣喰っていたことに気づいた。互いを嘆き合いながら、自らをも嘆く様な情けない二人がそこにいた。
 だが同時に、それに気づいた瞬間、例え今だけでも、自分と彼女が「恋人」になれないとしても、きっとそれ以上にはなれる。そんな気がした。
「何でも聞いてやるよ、どんなことでも。友達、だろ?千佳子…。」
 憲治は微笑んだ。千佳子も、泣きながら微笑んだ。

第3節に続く