スピリット・オヴ・サマー

 千佳子の細めた目の奥で、何かが悲しげに揺れていた。言葉を濁したのも、ただ単に就職難を憂うからではない、もっと別の理由からだと憲治は感じた。何が揺れているのだろう。そしてすぐに憲治は見つけた。
 「風」だ。人の心が揺れ動く様が、密やかな「風」を感じるようにわかってしまうのだった。憲治は「憧子」の言葉を思い出した。
『霊的抵抗力の低下…。ヒトには見えないモノが見えてしまうことも…。』
「千佳子、あのさ…、」
 憲治はそこまで言って、あっ、と口をつぐんだ。