スピリット・オヴ・サマー

「憲治君、得意そうに『真珠湾攻撃の日』、だって…。憲治君、飛行機とか戦争とか詳しかったもんね。」
「あ、ああ、まあ、ね…。」
 憲治は窓の外に目を移した。これ以上口を開くと、「何であの時俺に聞いたの」と言ってしまいそうだった。その先の、千佳子の答えも恐ろしかった。
「変わり者だったよね、憲治君。憲治君の周りの友達もそうだったみたいだけど。私の入る隙間なんかなさそうだった。」
 千佳子のその台詞に、憲治はびくつきながら千佳子を見た。こぽこぽと音を立ててカップに注がれるお茶。リンゴの甘い香りの向こうで、千佳子は微笑みながらお茶を注いでいる。